涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜
 


ブラウスを握る手は、隣に立つ夕凪に外された。


大きな左手が、包むように私の右手を握った。



夕凪が説明する。



「全ては、俺の勘違いが原因なんだ。

潮音に約束破られたと、勝手に思い込んで……

昨日、やっと間違いが分かった」




上條君は、私も夕凪も見ようとしない。


鞄からペンケースを出し、ノートと教科書を出し、

ホームルームもまだなのに、1時間目の用意を始めている。



「もう、いいから」



抑揚のない声で、上條君が言う。

いいと言われても、夕凪は話し続ける。



「俺がムキにならず、潮音と話し合っていれば、すぐに擦れ違いに気付いたのに。

結果として、俺達のことにお前を巻き込んだ」



「言わなくて、いいって……」




夕凪が頭を下げた。

私も隣で一緒に、頭を下げた。



「上條、悪かった。
俺のせいでお前に……」



謝罪の途中で、上條君が椅子を鳴らして立ち上がる。


ペンケースも教科書も払われ、床に落とされた。


謝る夕凪に、怒声が浴びせられる。



「いいって言ってんだろっ!!」




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