涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜
夕凪が真顔で言う。
「上條のこと、怒ってないけど、
やっぱヤダ」
「え?」
「他の男が潮音に触んのは、ヤダ」
「わっ! 夕凪!?」
夕凪が私をいきなり抱え上げた。
驚いて、慌てて夕凪の首に腕を回して掴まった。
夕凪はそのまま歩き出す。
教室のドアを足で器用に開けて中に入り、すぐ閉めた。
お化け屋敷の片付けは、明日のパレードが終わってから。
まだそのままに残されている。
暗い中をスタスタ歩き、夕凪が立ち止まった場所は、
お菊さんの井戸だった。
井戸の中に下ろされた。
二人でお菊さんごっこをしたい訳じゃないと思うけど……
井戸に下ろされた意味が分からず、困っていた。
「潮音、しゃがんで?」
「う、うん」
分からないまま、言われた通りにしゃがみ込む。
夕凪も、私の後ろに入って来た。