涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜
唇を離した夕凪が言う。
「俺の物って印、付けといた」
印とは、キスマークのことだった。
首筋なんて見えやすい場所に付けられて、
これからしばらくは、髪を結えそうにない。
キスマークを触り気にしていると、
「潮音」
優しい声で、名前を呼ばれた。
横を向くと、至近距離に色香を湛えた茶色の瞳が。
狭い井戸の中で、お互い体を捻り、キスしようとした。
唇が触れる寸前、教室のドアがガラリと開けられた。
掃除を終えたクラスメイトが帰って来たみたい。
聞き覚えのある男子二人の声が、すぐ近くでした。
「忘れ物ーどこ行ったー?
げ、暗くて見えねー」
「電気つけるか?」
キス寸前の私達は、そのまま顔を見合わせ固まっていた。