涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜
 


唇を離した夕凪が言う。



「俺の物って印、付けといた」



印とは、キスマークのことだった。


首筋なんて見えやすい場所に付けられて、

これからしばらくは、髪を結えそうにない。



キスマークを触り気にしていると、


「潮音」


優しい声で、名前を呼ばれた。


横を向くと、至近距離に色香を湛えた茶色の瞳が。



狭い井戸の中で、お互い体を捻り、キスしようとした。



唇が触れる寸前、教室のドアがガラリと開けられた。


掃除を終えたクラスメイトが帰って来たみたい。


聞き覚えのある男子二人の声が、すぐ近くでした。



「忘れ物ーどこ行ったー?
げ、暗くて見えねー」



「電気つけるか?」




キス寸前の私達は、そのまま顔を見合わせ固まっていた。



< 272 / 378 >

この作品をシェア

pagetop