涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜
うっとり波間を見つめていると、
船着場に父が来て、隣に座った。
父は黒いウェットスーツ姿。
千葉大会にはプロの部で出場するから、夕凪と一緒に今まで海に入っていた。
「お父さん、もう上がるの?」
「おう。潮音の弁当作らないとな。
今日は何がいい?
クマさんか?ウサギさんか?」
「…… キャラ弁じゃない、普通のお弁当がいい」
そんなことを言っても、父はキャラ弁をやめてくれない。
普通のお弁当を希望する私に、
「普通か〜 じゃあ今日は、普通のキラキラお姫様弁当だな」
そう言って笑った。
お弁当のテーマが決まると、父は夕凪の波乗りをジッと見る。
プロの目で細かくチェックして、
評価した。
「今のライディングは、9.1点。
エクセレント!
決勝には確実に残る。
3位辺り入れそうだな。
波次第では…… 優勝も有り得る」
「本当!?」
「ああ。ここのところ、急成長しやがって。
若いって、いいな〜!
それとも、可愛い勝利の女神が、夕凪に力を与えているのかな?」