涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜
海から上がった夕凪と、家の前で話し込む。
優勝を狙える位置にいると、父が評価したことは内緒。
「夕凪に言うなよ。優勝を意識させたくないから。
平常心で臨ませたい」
父にそう言われていた。
私から優勝の二文字を言わなくても、夕凪が自分で言ってしまう。
「潮音も見に来いよ。絶対優勝してやる!
そして来年は、プロトライアルに挑戦だ!」
拳を強く握りしめ、目の奥に闘志がメラメラ燃えていた。
優勝とプロ……
夕凪の中で、もう道筋が作られているみたい。
話し込んでいる内に、バス通学の私の時間が無くなって行く。
「あっ!」
と気付いた時は、7時過ぎ。
夕凪を横目でチラリと見た。
時間を忘れた私も悪いけど、
サーフィンを熱く語って離してくれない、夕凪も悪いよね?
そんな思いを込めて。