涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜
夕凪が言う。
「バイク……
後ろ乗るか?」
「うん!」
そう言ってくれるのを期待していた。
バイク二人乗りは、これで5回目。
校則違反なのでイケナイことだけど、楽しいからまた乗りたいと思ってしまう。
8時少し前に迎えが来た。
夕凪の肩に手をかけて、後ろのシートに跨がる。
夕凪の体に腕を回すと、バイクが走り出した。
バイクって、気持ちいい。
「潮音を乗せているから、超安全運転」
夕凪はそう言うけど、次々と車を追い越し、ビュンビュン飛ばして、
いつもスリルを感じる。
夕凪の背中に、ギュッとしがみつく。
布越しに伝わる体温も気持ちいい。
ヘルメットを被っても、風の音が大きく聞こえる。
流れる景色、
スピードと風の音、
胸に当たる、夕凪の背中……
嬉しくて楽しくて、ドキドキして、
今日も30分が短く感じた。
あっという間に、学校に着いてしまった。