涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜
 


クラス全員が困っていた。

仕切る人がいないと進まない。

具体的な計画や準備も、何も分からない。



男子の一人が夕凪に当たる。


「昨日、貝原が脅したせいだろ?

ぶん殴るとか、言わなくて良かったんだよ。

佐伯が来ないのは貝原のせいだから、お前が何とかしろ」




夕凪は困った顔をした。

怒るのではなく困る様子を見ると、責任を感じているようだ。



一人が言ったのを皮切りに、

「貝原やれよ」
「そうだ、そうだ」

と声が上がる。



みんな、土壇場で係の代役なんてやりたくない。

押し付ける対象が現れ好都合とばかりに、一斉に責められる。



夕凪が溜息を吐いた。

物凄く嫌そうに、「分かった」と床に向けて言った。



夕凪の制服の袖を掴んだ。

「私もやるよ」
と言った。



夕凪が佐伯さんにキツク当たったのは、私を守ろうとしてくれた結果だ。

夕凪一人に、代役をやらせるわけにいかない。



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