涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜
涙を拭こうと持ち上げた手を、
夕凪に掴まれた。
強く引っ張られ、夕凪の胸の中に飛び込んだ。
私を抱きしめながら、夕凪が声を荒げた。
「ふざけんじゃねーよっ!
今さら母親ヅラされても、迷惑なんだよ!!」
「夕凪!?
お、お母さんはね、あなたのことを心配して……」
「うるせーっ、黙れっ!!
潮音を悪く言うのは許さねぇ。
俺達は、あんたが思うような軽い関係じゃねぇんだよ!!」
夕凪の言葉遣いが崩れたことにも、鋭く睨む視線にも、
母親は驚き動揺していた。
こんな風に感情をさらけ出す息子を初めて見た……
そんな顔をしている。
夕凪の腕に更に力がこもる。
母親への怒りと、私を失うまいとする必死の感情が、体を通して伝わってくる。
夕凪が低く怒りのこもる口調で言う。
「潮音は、俺の全てだ。
親に置いてきぼりにされた俺の側に、ガキの頃からずっといてくれた。
潮音は俺の、最後の居場所なんだ。
東京なんて絶対行かねぇ。
新しい家族?そんなのクソ食らえだ。
母親も父親もいらねぇよ。
潮音さえいてくれたら、他に何もいらねぇんだよ!!」