涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜
夕凪がそんなことを言うなんて驚いたけど、
その言葉は、気遣いでも優しさでもなかった。
謝罪を拒絶するのは、夕凪らしい考え方のせい。
「事故を佐伯のせいにしたら、俺は一生、佐伯を恨まないといけねぇだろ。
そんなの嫌だね。
お前の顔なんて、見たくねぇんだよ。記憶から消してやりたいくらいだ。
お前にも綺麗サッパリ、俺と潮音のことを忘れてもらいてぇ。
二度と俺達の前に、現れんな」
謝罪も見舞金も断固拒否する夕凪に、
佐伯さんは暗い顔して帰って行った。
そして2年生になったクラスに、彼女はいなかった。
夕凪に内緒で先生に尋ねると、
「家庭の事情で遠くに引っ越した」
それだけ教えてくれた。
佐伯さんがいなくなっても、スッキリした気分にはなれない。
夕凪は「忘れろ」と言うけど、
私は彼女を忘れられそうになかった。