涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜
◇◇◇
高校2年の秋のこと。
学校終わりの帰り道、バスを下車して、夕凪と田舎道を歩いていた。
夕凪は今、義足を付けて歩いている。
その足取りはスムーズで、ズボンを履いていれば義足だと気付かないほどだ。
「足、疲れてない?」
夕凪に聞いてみる。
「疲れたと言ったら、潮音がおんぶしてくれんの?」
夕凪はそう言って、ふざけて私の背中に体重をかけてきた。
潰れそうになった私を逆に支えて、夕凪は笑う。
夕焼けの田舎道に、ふざけ合う二人の影が、
くっついたり離れたり、長く伸びていた。
今は毎日穏やかだけど、ここまでくるのに夕凪は大変な思いをしてきた。
足を切断したのは、約一年前。
切断面の傷が癒えてから、義足の練習を始めた。
これが予想よりも大変で、始めて間もない頃の夕凪は、毎日ぐったり疲労していた。