涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜
 


夕凪の眉間にシワが寄る。

隣で私が慌てた。



悲痛な思いでサーフィンを諦めた夕凪に、

何をプレゼントしているのだと、父に怒りたくなる。



父はそんな私達の反応を予想していたように、声を上げて笑った。



それから、


「わざわざ過去の雑誌を取り寄せてやったんだから、そんな顔してないでしっかり読め」


そう言った。



言われて気付いたのは、その雑誌が5年前の物であること。


表紙のサーファーは、型遅れのウェットスーツを着て、

雑誌自体も日焼けして色あせていた。



表紙を見て、気付いたことはもう一つ。


“特集”と太字で書かれた横に、

『義足のサーファー、千倉大会で優勝!』

そんな見出しが載っていた。



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