涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜
 


義足のサーファー!?


義足でのサーフィンを全く考えていなかった私にとって、それは嬉しい驚きだった。



父はビールを飲みながら、

「サーフィンに限らず、義足で活躍するアスリートは世界中にいる」

と教えてくれた。



夕凪はまた、サーフィンができるんだ……


夢を追い掛けることができるんだ……



夕凪が足を失ってから一年、
こんなに喜びを感じたことはなかった。


食事中なのに立ち上がり、感謝を込めて父に抱きついた。



「波乗り用の義足、早速作りに行かないとな」


父は上機嫌にそう言った。



「夕凪の復活記念に、新しいウェットスーツ買ってあげる!」


母も嬉しそうに言った。



本人そっちのけで盛り上がる私達に対し、夕凪はなぜか静かだった。


ぼんやりした顔で、雑誌の文字を見つめるだけ。



「夕凪、どうしたの?
サーフィンができるんだよ?」



「あ、ああ……」




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