涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜
離れた距離
◇◇◇
4月、桜の季節。
今日は高校の入学式だった。
両親と一緒にバスに乗り、隣町へ。
私の入学する高校は、バスで片道1時間の遠い所にある。
バスはガタゴトと、荒れたアスファルトを進む。
父は山合いに見える海を眺め、目を細めていた。
隣に座る私は、父を見てつい笑ってしまう。
真っ黒に日焼けした肌に赤茶の髪と、金のピアス。
プロサーファーであり、サーフショップを経営している父の容姿は派手で、
入学式用に買った、真面目なスーツとネクタイは似合わない。
クスクス笑う私を見て、父は小突いてくる。
親子二人じゃれ合っていると、前の座席から母に叱られた。
「潮音、もう中学生じゃないんだから、ちゃんとしなさい。
ケンちゃんも!父親らしくしていてよ」