涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜
机の上に乗せていた手に、上條君の手が被さった。
キュッと握りしめるから、驚いて彼を見た。
「貝原がガキみたいに、いつまでも拗ねているなら好都合。
俺のポジション、フォワードなんだ。
朝比奈さん、サッカー分かる?」
話しが突然、サッカーに変わった。
サッカーに関して無知なので、何も分からない。
首を横に振ると、上條君は身を乗り出し、私に少し近付く。
その目には、挑戦的な光が浮かんでいた。
「敵ゴールに1番近いポジションがフォワード。
仕事は、攻めて攻めて、攻めまくること。
あれ… まだ意味分かんない?
朝比奈さんを攻めるから、覚悟してと言いたいんだけど。
君が貝原を好きでも、俺は諦めないから」
そこまで言われて、やっと理解した。
自分が今、告白されている最中だということを。
驚いて、アホみたいに口を開け、マジマジと彼を見てしまう。
夕凪の机に線を引いていた夕陽は、
角度を変えて、上條君の顔を照らしていた。
眩しい夕陽に目を細めても、彼は私から目を離さない。
「そんな可愛く驚かれたら、攻めにくいな…」
そんな事を言い、照れたように笑っていた。
――――…