涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜
嬉しさと切なさと
◇◇◇
6月に入った。
雨の日が増え、ジメジメと不快な日が続く。
私の心も空と同じで、曇ったまま。
また臆病風に吹かれ、夕凪に声が掛けられなくなっていた。
2時間目が終わった中休み。
次の授業英語の教科書を出していると、
上條君が近付いて来た。
彼は空いていた隣の席に座り、私に話しかける。
「潮音ちゃん、
体育祭の種目、決めた?」
上條君は私を“潮音ちゃん”と呼ぶ。
もう朝比奈さんとは呼ばれない。
告白された翌日、
「名前で呼ぶから」と言われたのだ。
私を攻めると宣言した通り、上條君は良く話しに来る。
中休みや、部活前の短い時間も、
私と加奈の二人のお昼にも、たまに「入れて」と混ざりに来たりする。