また、
柚木恵美
「直、おは!」
「おは」
「珍しいじゃん!直が遅刻しないって!」
「目が覚めたからな。」
思い出したらまた冷や汗が出た。
高所恐怖症じゃないはずなんだがどうもあの浮遊感が苦手だ。
「直偉いよ!」
そういって恵美は俺の腕に絡み付く。
「偉くなった記念にヤらせて。」
「直さ、」
「ん?」
「性欲と睡眠欲に食欲が持ってかれてるからお腹空いたとか感じないんじゃないの?」
「確かに。」
的を獲た答えだ。
「でも最近シてないから俺限界。」
そう言うと恵美に殴られた。

真面目に登校した俺に驚いたのはどうやら恵美だけじゃないらしい。
「おい、俺傘持ってきてねぇよ。」
隣の席の水倉賢斗がぼやいた。
賢斗はサッカー部で、今まで朝練だったのか制服を膝まで捲り上げシャツなんかボタン全開だ。
「は?雨降んの?」
「昼から降るよ。」
降水確率はゼロだったはずなのにな。
面倒だから早退でもしようかな。
「降水確率あてになんねぇな。」
「まぁお天気お姉さんも予想できないだろ、お前が遅刻しないなんて。」
「・・・ウザ。」
ようやく意味を理解して、俺は賢斗を睨み付けた。
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