恋音
一緒にいたい
新学期
~『好きだよ』と伝えればいいのに 願う先こわくて言えず
『好きだよ』と『好きだよ』がつのっては溶けてく
君との時間が一秒でも長くなるならずっとじゃなくていい~
高校に行く電車の音。
ピンクの音楽プレーヤーから聞こえる大好きな曲。
いつもいつも聞くこの音が、大好きだ。
滝沢明日香は今日もこの田舎のど真ん中を走る電車に揺られていた。
今日は新学期。今年で二年生。
もうすぐクラス発表だ。
でも、明日香はいつも通り、みんなより5本遅い電車に乗る。
いつもいつも遅刻している明日香は校則違反のかたまりだった。
化粧、短いスカート、染めた髪・・・
一見、男遊びが激しそうだな、という印象を受ける。
実際、彼氏は現に6人目。
今も付き合っている。
同じ学年の、志方悠也だ。
でも・・でも、片想いの人がいる。
ずっとずっと・・・1年生の時から好きだった人が。
それを知ったうえで悠也は付き合ってくれと言ってくれた。
その彼をふれなかった明日香だった。
そう、ぼぉっとしていると、気付けばスマホにメールが12件入っている。
見てみれば全部クラスの報告だ。
―奈々―
明日香!
クラス一緒だったよん(> <)
今年もよろしくね!!
―悠也―
クラス一緒だった。
よろしくな。
全部同じような内容だった。
その中で明日香は1人だけさがしていた。
「魁斗・・・」
そう、片想いの相手。
仁科魁斗を。
明日香と同じで、校則違反のかたまりでも、成績いいし、人気だし。
ゆるいカーブを描く茶色の髪に、まっすぐな目。
低音の声で静かに話すのに、好きなことになると声からでもわかるテンションの上がり方。
それを思い出しながら、受信ボックスをスクロールする。
『魁斗』の文字を探して。
でも・・その2文字はなかった。