恋音
少しすると電車は目的地に着いた。
駅内のバス停でバスを待っていると、スマホの着メロが鳴った。
スマホの画面を見ると・・・
そこには・・・
ずっと待っていた相手の名前があった。
「もしもし」
少し上がった声で電話に出ると、大好きな声がすうっと耳に入ってきた。
「もしもし?明日香?」
「うん。」
「あっ今大丈夫?電車?」
ほんの少しの気遣いが、いちいち私の心を揺らすのがわかった。
「大丈夫。今バス待ってるところ」
「そっか。」
「どうかした?」
「あぁ・・いや、みんなお前にメールするって言うからさ。
メールしても見てもらえねーかなって思って。」
嬉しくって、ついついニヤけてしまう自分がいた。
おかしいのかなと自覚しながらも次の言葉を待つ。
「明日香、今年も一緒のクラスだったぞ。
よろしくな。」
「うん。こちらこそ。」
「今、みんな教室に入り始めたから。
始業式前にはこいよ。」
「オッケイで~す。
ありがとね、魁斗。」
「いえいえ。じゃ、あとで。」
「うん。」
ツーッツーッツーッ
スマホをしまい、顔を上げるとちょうどバスが来る。
「よし。がんばろう」
早く教室に行きたくて。
みんなに会いたくて。
バスから降りて校舎に向かう私の足は、いつもより少し早い足音を奏でた。