恋音
「俺・・・やっぱ明日香のこと‥」
“好きだ”
魁斗は確かにそう言った。
しかし、私が何か言おうとすると、
「“友達として”な。」
と言って、またギュッとわたしを抱きしめた。
「魁斗…」
「お前には悠也がいる。
悠也とうまくやれよ。」
「明日香は・・・魁斗が・・友達としてじゃなくて・・・」
「俺は・・・!!」
魁斗は叫ぶように言った。
「悠也が好きだし・・明日香も・・好きだ。
それは恋愛対象としてかもしれない。
でもその感情で悠也に嫌な思いをさせたくないし・・・」
下を向いて、か細い声ででもしっかり、
「好きなヤツと…
友達としてでもいいから・・一緒にいたいんだ・・・」
ゴメン。
そう言って魁斗の体温は離れて行った。
それでもきちんと私を家までおくってくれた。
帰り際、魁斗は暗くなり始めた空を見て言った。
「いつでも困ったら相談しろよ。
友達なんだから。」
と。
その背中に私は叫んだ。
『ありがとう』
って。
振り返らずに手を振る彼を見て、
やっぱり好きだと確信した。