恋音


朝、学校にいつものように遅れていくと、もう出席確認は終わっていた。
10分間の休み時間に入ったようだ。

教室に入ると、悠也が
「明日香~」
と呼びながら来た。

「昨日はごめん!!」
「いいよもう。
 なんか話しあったんでしょ?
 何かあった??」
すると悠也はいいづらそうに
“場所替えよう”
と私を引っ張って行った。


悠也が止まったのは、もう使われていない教室だった。
窓を開け、外を見る悠也。
沈黙の時間が重い。
重い沈黙を破るのはこわかったけど、自分から話しかけた。

「どうしたの??」
「昨日、遅れなかったのは俺が悪かった。
 だけど・・・なんで魁斗となんだよ・・・」

悠也を見ると、壁に寄りかかり、上を見ていた。

「べつに・・・誘ってくれたから。」
「片想いの相手なのに?
 彼氏がいるのに?」
「悠也だって、私が魁斗のこと好きって・・・」
「知ってっけどさぁ・・・」

はじめてだった。
こんなに怒った悠也は。
いつもいつも優しくって、お兄ちゃんみたいで。
片想いのこともしっかり理解しててくれて。

でも、今思うと、甘え過ぎたのかも知れない。

悠也はいつも我慢してくれてたのかも知れない。


「ごめん・・・」

ごめん。
本気でそう思っている。
けど・・・けどね。

「私・・・やっぱり魁斗諦められな・・」

言ってしまった。
悠也はゆっくり顔をこちらに向け、

「別れるか・・・」

と言った。

その瞬間、涙があふれてきた。
こんなに思ってくれていたのに。
自分は何も思ってないみたいな顔して、なのに制服の袖がぬれていて。
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