[中]余命24時間
PM5:00~涙~
翔に電話を切られてから約2時間が経過していた。
居場所を教えてはいないのに、彼はあたしのいる場所を知っていたようで。
ただ呆然と部屋を眺めるあたしの耳に届いた、バタバタと階段を駆け上がる足音。
考える間もなく、あたしにはその足音が誰のものなのかがわかってしまった。
ノックもせずに扉を開けた翔は、全身に汗をかいている。
ハアハアと息を切らし、ドアノブに手をかけたまま驚いた表情をする、翔。
「美音…お前…」
きっと、あたしの真っ赤になった瞳を見て驚いているんだろう。
こんな表情の翔、見たことない。
あたしがそんな、悲しい顔をさせちゃってるんだ。
翔は、今でも涙が止まらないあたしに、ゆっくりと近づく。
彼はもう、あたしの病気のこと知ってるのかな。
もしかしたら、振られちゃうのかもしれない。
"お前みたいな病気もちの女とは、付き合えない"って。
それはそれで、あたしは受け止めるしかないんだと思う。