[中]余命24時間


泣いて泣いて泣いて、

その後に涙なんか枯れちゃえば…

こんなに惨めな姿を、大好きな人に見られることなんてなかったのに。



翔の言葉を聞きたくなくて、力を込めた手を耳にあてる。そして、思いっきり頭を横に振る。



「…やだ…聞きたくない……」



出逢わなければ、とまで思った。


翔に出逢っていなければ、あたしは直ぐにでも死を受け入れることが出来ただろう。


けれど、出逢ってしまったから。



人を好きになる喜びを

人を想って泣くことを

愛故の嫉妬を

彼が好きだということを

知ってしまったから。



あたしは"生きたい"と思えるようになったのかもしれないんだ。



「美音!」



普段は温厚な性格の翔が、突然叫んだ。

今までこんな彼を見たことのなかったあたしは、思わず泣くことすらも出来なくなってしまう。



「美音、ちゃんと聞いて?これは、大事なことだから」



あたしはこんなに切ない表情の翔を、見たことがない。


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