[中]余命24時間
「美音。結婚しよう」
―――え…?
目の前にいる、世界一愛しい人の言葉を信じられないあたしは、バカなのだろうか。
翔、今あたしに『結婚しよう』って、言った?
「…冗談…でしょ……?
何言って……」
あまりに突然すぎて、現実を理解することが出来ていないはずなのに、涙の止まらない瞳が、作り笑いをする。
今、あたしは翔の瞳にどんな風にうつっているんだろう。
告白をされたときは受け入れられなかった現実なのに、どうして今はこんなにも冷静でいられるんだろう。
耳元にあるあたしの右手をそっと握って、静かに微笑む翔。
あたしの部屋の特徴である大きな窓からは、傾いた夕日が顔を覗かせていた。
「冗談じゃないよ」
「だって結婚なんて…!」
「しよう。結婚」
一度決めたことは、絶対に諦めない。
それを象徴しているかのような、まっすぐな瞳。
何の濁りもなくて、羨ましくなるくらいに、綺麗で。