[中]余命24時間
「さっき、部屋に来る前に、お前の母さんから聞いたんだ、病気のこと」
お母さんは、翔の存在を知っている。
あたしに彼氏が出来たことに最初に気づいたのは、お母さんだった。
あたしが翔と付き合うことになったと知ったお母さんは、"よかったね"という言葉までかけてくれた。
「じゃあなんで…」
「だから、だよ。
あと24時間しかないんだろ?
だったら、やりたいことしよう。
出来ることを、出来る限りやり遂げよう」
どうして翔は、いつもあたしが欲しい言葉をくれるんだろう。
握りしめた手のひらからは、温かいぬくもりが伝わってくる。"生きている"という、あかし。
「俺、まだ20歳の大学生だし、結婚なんてまだ早いかなって思ってたんだけど。
お前も17歳だしな。でも…
なんでだろ。お前が24時間後に死ぬって聞いたとき、なんでかわかんないけど俺、"一緒にいたい"って思ったんだ」
"辛いね"とか"可哀想"とか"死ぬ訳ないじゃん"とか。