[中]余命24時間


『え……?』



梅雨は明けたはずなのに。

降りしきる雨のせいで、部屋は蒸し暑かった。



『翔くんは、それで幸せになれる?』



お母さんの言葉が、胸に刺さった。

最初から、そう簡単に賛成してもらえるとは思っていなかった。


でも、どうしてそんなことを言うの?


それってまるで…

あたしは死ぬんだから、結婚なんてしたら翔が不幸になるって

そう言っているように聞こえるよ?


下がりきった頭は、一向に動こうとしなかった。


夏の始まりだからなのだろうか。

体中からは、今までに体験したことのないくらいの汗が吹き出していた。










『幸せになります』









低く優しく、あたしとお母さんの耳に響いた声。


翔の声はいつだって、あたしのことを喜ばせてくれるんだね。


翔の横顔は、希望に満ちていた。


あたしの大好きな、まっすぐな瞳。

"翔"という人間の、象徴。



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