[中]余命24時間
『…そう。2人が決めたことなら、反対はしない。お父さんはどう言うかわからないけどね。
でもね。1つだけお願いがあるの』
俯き加減で話し出したお母さんに、あたしたちはただ黙って耳を傾けるしかなかった。
『…お願い…?』
あたしの顔は、さっきと比べものにならないくらい真っ赤だったと思う。
『"最後"じゃなくて。
"永遠"に幸せにしてあげて?
美音のこと。
それを約束出来るなら、お母さんは結婚に賛成するわ』
どうして、気づかなかったんだろう。
いつもいつも反抗してばかりで、気づけなかった。
気づこうとしなかった。
…お母さんの、優しい表情に。
小さい頃から当たり前に隣にいて
当たり前に怒ってくれて
当たり前に頭を撫でてくれて。
バカなあたしは、お母さんのこんな優しい表情に、気づきもしなかったんだ。
『…お母さん…ありがとう───…』
お母さん。気づくのが遅くなって、ごめんね。