[中]余命24時間
お母さん、大好きだよ―――…。
あたしは、死ぬことを意識したとき、初めて母のありがたみを知ったんだ。
ガチャ…
お母さんと翔とあたしの3人で、さっきまでの恥ずかしい話を語っていたとき、
突然玄関が開く音がして、同時に「ただいま」という低い声が聞こえた。
この声は…お父さんの声だ。
しだいに翔の表情は固まり、さっきとは比べものにならないくらいカチンコチンになっている。
きっと、緊張しているのだろう。
お父さんと翔は、今日が初対面。
緊張するのも、無理はない。
それにあたしの心臓だって、経験したことのないくらいに鼓動が激しい。
…大丈夫。
あたしたちは、1人じゃない。
そう翔に伝えたくて
自分に言い聞かせたくて。
あたしはそっと、自分の手のひらと翔の手のひらを重ね合わせた。
今日、お父さんに伝えなくてはならないことは、2つ。
1つはもちろん、翔と結婚したいということ。
そして…