[中]余命24時間
しばらく沈黙が続いた後、最初に声を出したのはお母さんだった。
「美音、お父さんに言うことあるんでしょう?」
「うん…」
お母さんのその一言で決心がついたあたしは、深く深呼吸し、話を切り出していく。
「お父さん、あのね───…」
3日前から、腕に大きな痣ができていること。
その痣の原因を知るために、病院に行ったこと。
そして、つい数時間前に医者に言われた、あたしの余命のこと。
わかってたつもりなのに、これが現実なんだって改めて痛感させられる。
思わず泣きそうになるあたしの肩を、ぽんぽんと叩いてくれる翔。
あたしの言葉を、目を潤ませながら聞いている、お母さん。
お父さんは、表情を固くしたまま動かない。
これは、まだ第1ステップなのに。
こんなところでくじけてちゃ、だめなのに。
喉の奥からこみ上げてくるものが、なかなか引こうとしてくれない。