[中]余命24時間
お父さんからの承諾がもらえなければ、あたしたちは結婚することが出来ない。
そんなこと、最初からわかりきっていたはずなのに。
どうして今、こんなにも苦しいんだろう。
時計はもう既に、8時を指していた。
お父さんが無言で部屋を去ってから10分がたった頃、お母さんは夕飯の支度を再開し始めた。
「翔くん。今日はもう、お父さんは出てこないみたいだし、泊まっていったら?
夕飯も出すわよ」
お母さんなりの、気遣いだったのだろう。
物音のしない両親の寝室。
それは、お父さんがいまだに現実を受け入れることが出来ていないということを、表していた。
「でも…」
返事を濁す翔に、しがみつくあたし。
「お願い。泊まってって?
…一緒にいたい」
最後の夜だから、大好きな人と一緒にいたい。
最後の最後まで、愛する人と一緒にいたい。
もうこの際、神様でも何でもいい。
あたしの願いを、叶えてくれる人がいるのなら。