[中]余命24時間
ポタリ…ポタリ…と、翔の瞳から溢れた滴が、あたしの肩を濡らしてく。
このいびつな形のみずたま模様は、彼の弱さの塊。
震える声は、だんだん小さくなっていく。
あたしは、どうすればいいのだろう。
何て声をかければいい?
"大丈夫だよ"
"あたしは死なないよ"
"ずっと翔のそばにいるよ"
全部全部、あたしには言えない言葉。
あたしには、ふさわしくない言葉。
自分がこんなにも無力だなんて、思ってもみなかった。
「…翔…ごめんね…」
自分でも気がつかないうちに、冷たい涙が頬を伝っていた。
お互いの温もりを、お互いの肌で感じあう。
こんなにも温かくて、
安心できる翔のぬくもりを
あと数時間後には、感じられなくなってしまう。
そう思ったら、自然と涙がこぼれていた。
他には何も
いらないから
どうかどうか
お願いがあるの。
「…ごめんね───…」
あたしから翔を、とらないでください―――…。