[中]余命24時間


『──…里村?』



翔の教育実習が終わり、心にぽっかりあいた穴に寂しさを感じていた頃。


たまたま1人で泣きたくなって足を運んだ映画館に、彼がいた。



『橋本先生!?』



その頃はまだ、あたしは翔のことを"先生"と呼んでいて。


恋愛感情なんて、これっぽっちもなかった。



あたしが見に行った映画は、ケータイ小説が映画化されたもので、"泣ける"と評判されていたもの。


普段は親友にも泣き顔を見せないあたしは、映画は見たい、

だけど泣き顔は見られたくない、という葛藤の末、1人で映画を見ることに決めた。


そしてスナック菓子を食べながら開いていた席に座り、上映を待っていた。


その時、『隣いいですか?』という声に反応し、顔を上げたあたしは、思わず目を丸くした。



『───里村?』



なぜならば、そこにはいるはずのない人がいたから。



一瞬、自分の目を疑ってしまった。


< 38 / 76 >

この作品をシェア

pagetop