[中]余命24時間
『──…里村?』
翔の教育実習が終わり、心にぽっかりあいた穴に寂しさを感じていた頃。
たまたま1人で泣きたくなって足を運んだ映画館に、彼がいた。
『橋本先生!?』
その頃はまだ、あたしは翔のことを"先生"と呼んでいて。
恋愛感情なんて、これっぽっちもなかった。
あたしが見に行った映画は、ケータイ小説が映画化されたもので、"泣ける"と評判されていたもの。
普段は親友にも泣き顔を見せないあたしは、映画は見たい、
だけど泣き顔は見られたくない、という葛藤の末、1人で映画を見ることに決めた。
そしてスナック菓子を食べながら開いていた席に座り、上映を待っていた。
その時、『隣いいですか?』という声に反応し、顔を上げたあたしは、思わず目を丸くした。
『───里村?』
なぜならば、そこにはいるはずのない人がいたから。
一瞬、自分の目を疑ってしまった。