[中]余命24時間


でも、何度瞬きをしても、目の前にいるのはまぎれもなく翔で。


しかもあたしと同様に1人でいたことに疑問を感じる。


そんなことを考えるあたしなんて気にせず、あっけらかんと隣に座ってくる翔。



『この映画、泣けるって評判なんだってな』


なんて、さも当たり前のように話までかけてくる。


そんな彼にあたしは、『はあ…』と力のない返事しかできなくて、やがて映画が始まると、彼は喋るのをやめた。


お互い何も言わずに、映画の世界に入り込む。


途中で彼女でも来るのかな、と何度かチラチラ翔の方を見たけれど、

30分、1時間たっても翔は1人でスクリーンに見入っていた。


そして、物語は終盤に入り、いよいよ"泣ける"場面に突入する。


あたしもハンカチを用意し、物語の世界に浸る。



『逢いたかった……』



感動の再開。あたしの目からはとめどなく涙が溢れて、嗚咽が止まらなくなっていた。


その時…。


ぎゅっ


突然、右手にあたたかい感触を感じた。



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