[中]余命24時間
『…え?』
思わず映画を見ている最中だということを忘れ、まぬけな声を出してしまった。
自分の右手を見ると、大きなごつごつしている手が、あたしの手を握っている。
その先には…
もちろん、さっきあたしの隣に座った翔が。
しかもなんか、顔が真っ赤だし。
訳がわからず、泣くことさえも忘れてしまったあたしの手をさらに強く握る翔は、
今まであたしが見たことのない顔をしていた。
教育実習の時は、隙なんてなくて
いつだって真面目に教科書やノートに向かっていた。
その翔が、映画──しかもラブストーリーで泣いていたことが、信じられなかった。
すぐにでも手を離したかったけれど、自分が映画館にいるということを思い出し、断念。
結局。映画が終わるまでの30分間、翔はあたしの手を握ったままだった。
『いやー、あんなに泣けるとは思わなかった』
映画が終わると、翔はあたしの腕を無理矢理引っ張り、ファミレスへと入った。