[中]余命24時間
だけど、あたしは首を横にふる。
「美音?」
不思議に思ったのか、翔の手が止まった。
あたしの前に差し出された彼の手には、プリクラが握られている。
全部で5枚のプリクラに写るあたしたちは、どれも笑顔を絶やしていない。
翔…。
このプリクラに写るあなたの笑顔は、本物ですか?
「いらない」
まっすぐ、翔の瞳を見つめてそう言った。
手にしてしまえば、きっと涙がこぼれる。
受け取ってしまえば、きっと決意が揺らぐ。
すがってしまえば、きっと強くはなれない。
ゲームセンターの騒音を背に、あたしは翔に別れを告げる。
「翔…あたしね」
強くありたかった。
どんなに悲しいことがあっても、溜めた涙をこぼさない。
そんな人になりたかった。
強さってなんだろう。
そんなことを考えて眠れなかった夜は、何度あったのだろう。
そのたびに翔の顔を思い出しては、自分を保っていたつもりだった。