[中]余命24時間
でも、やっぱりあたしは、いつまでたっても弱くて。
涙ばっかり、
弱音ばっかり、
大好きな人にみっともないところばかりを、見せていた。
時々彼が見せる、切ない表情に気づかないふりをして。
「…あたし、最後を翔と過ごせて、」
大好きだけど。
大好きだから。
好きな人には、
愛してる人には、
大切な人には、
笑っていてほしい。
「…幸せだったよ――…」
翔の動きが、完全に止まった。
…ような、気がした。
強くあるって決めたのに、こんなときに俯いて、
彼の表情を無意識のうちに見ないようにしているあたしは、筋金入りの意気地なしだね。
最後の言葉は、口では言わない。
一生残しておけるように。
「…美音」
翔の言葉を合図にして。
あたしは思いっきり、走り出した。
「美音!?」
彼の叫びに、あたしはもう振り向いたりしない。
たったひとつ、あなたの幸せな未来を願って。
ただ、がむしゃらに走り続けた。