[中]余命24時間


優しくてかっこよくて、あたしなんかにはもったいないくらいの彼氏だ。


いつもあたしの弱いところを一番に気づいてくれる。



「…ぁたし…死にたくないよぉー…」



一度溢れ出した涙を止めるのは、そう簡単じゃない。

だから、泣きたくなんてなかった。


強いままでいたかった。

"強いね"って、言われ続けていたかった。



『美音、今どこにいる?』



いつになく低い翔の声は、なぜかあたしを安心させる。



「…言えない…」



翔には、言えない。

こんなボロボロな自分を、見て欲しくない。


だから"来ないで"と、心の中で訴えかけていた。


それなのに、いつもあたしを1番にわかっていてくれてるのは、翔なんだ。



『今行くから』



そう言った翔によって切られた電話からは、プープーという虚しい機械音が響いていた。












残り24時間で、

あたしには、何が出来る?


< 8 / 76 >

この作品をシェア

pagetop