虫の本
焦点を内側から外側へ戻し、俺はしっかりと赤髪を見据えた。
「やべーな、今日の俺はマジで冴えてる。絶対とは言えねーけど、もしかしたら俺、二度も白紙の栞って奴を見てるかもしれない」
「本当ですか!? しかし……」
「賭けてみる価値はあると思う。これが俺の勘違いじゃないなら、何処に在るか分からない栞を無闇に探し回るよりも、ずっと時間の無駄が無いはずだ。ちょっと確認したいんだけど、こういう事ってあり得るか……?」
俺は伝える。
赤髪にも理解し易いよう噛み砕き、順序立てて説明する。
一見すれば突飛な思い付きにしか聞こえないそれは、しかし頭ごなしに否定するには勿体ない程度の可能性を秘めているように感じた。
彼女はそれを最後までただ黙って聞き、自分の知識や考えと照らし合わせる作業を行っていく。
それは俺が思い付いたもう一つの突破口。
赤髪が糞天使と由加を足止めしている間に、俺が何処にあるかも分からない栞を探す。
この案を越える確実さを確保出来るなら、後は実行あるのみである。
世界が灰色に飲み込まれるまでのタイムリミットは変わらないけど、栞の在りかが分かっているだけ、俺が──いや、俺達が生き延びられる可能性は高いはずだ。
この案が通りそうなら、少し配役の変更が必要ではあるな、と俺は最後に付け加えた。
嘘で相手を貶め笑う者は、より大きな嘘によって身を滅ぼす事になる。
あの由加と糞天使をどこまで騙せるか、それは俺のやり方次第なのだろう。
嘘吐きに嘘を吐き、詐欺師を詐欺にかけようなどとは、俺もなかなかに大したタマである。
いつか嘘で身を滅ぼす事にならぬよう、俺も気を付けなくてはいけないのかもしれない。
けれど、いま俺が生き延びる為には、この嘘とハッタリは不可欠なのだ。
力で相手を捩じ伏せるような事だけは、絶対にしたくはない。
俺はあの糞天使とは違うという事を、奴に思い知らせてやりたいのだ。
そして、それを由加にも分かって欲しかったのかもしれなかった。
……未練である。
「で、実際の所はどーなんだ?」
具体的な説明を終えた俺は、表情を呆れ顔に変えた赤髪に意見を求めた。
「やべーな、今日の俺はマジで冴えてる。絶対とは言えねーけど、もしかしたら俺、二度も白紙の栞って奴を見てるかもしれない」
「本当ですか!? しかし……」
「賭けてみる価値はあると思う。これが俺の勘違いじゃないなら、何処に在るか分からない栞を無闇に探し回るよりも、ずっと時間の無駄が無いはずだ。ちょっと確認したいんだけど、こういう事ってあり得るか……?」
俺は伝える。
赤髪にも理解し易いよう噛み砕き、順序立てて説明する。
一見すれば突飛な思い付きにしか聞こえないそれは、しかし頭ごなしに否定するには勿体ない程度の可能性を秘めているように感じた。
彼女はそれを最後までただ黙って聞き、自分の知識や考えと照らし合わせる作業を行っていく。
それは俺が思い付いたもう一つの突破口。
赤髪が糞天使と由加を足止めしている間に、俺が何処にあるかも分からない栞を探す。
この案を越える確実さを確保出来るなら、後は実行あるのみである。
世界が灰色に飲み込まれるまでのタイムリミットは変わらないけど、栞の在りかが分かっているだけ、俺が──いや、俺達が生き延びられる可能性は高いはずだ。
この案が通りそうなら、少し配役の変更が必要ではあるな、と俺は最後に付け加えた。
嘘で相手を貶め笑う者は、より大きな嘘によって身を滅ぼす事になる。
あの由加と糞天使をどこまで騙せるか、それは俺のやり方次第なのだろう。
嘘吐きに嘘を吐き、詐欺師を詐欺にかけようなどとは、俺もなかなかに大したタマである。
いつか嘘で身を滅ぼす事にならぬよう、俺も気を付けなくてはいけないのかもしれない。
けれど、いま俺が生き延びる為には、この嘘とハッタリは不可欠なのだ。
力で相手を捩じ伏せるような事だけは、絶対にしたくはない。
俺はあの糞天使とは違うという事を、奴に思い知らせてやりたいのだ。
そして、それを由加にも分かって欲しかったのかもしれなかった。
……未練である。
「で、実際の所はどーなんだ?」
具体的な説明を終えた俺は、表情を呆れ顔に変えた赤髪に意見を求めた。