夜空とオモチャ箱。
夜空とオモチャ箱。
「浮気は死ななきゃ治んないね」
諦めてしまっている、高校生の声に振り返った。
ピンク色の綺麗な爪が光る指で、ストローを回す仕草が大人っぽくて見とれてしまった。
私は詰まらなそうに混ぜて濁らしたクリームソーダを見て、ちょっと恥ずかしくなる。
「浮気だから、私にまた戻ってくるのは分かるけどさぁ、いい加減こっちもヤキモチ焼く気も失せるわ」
「――ちゃんと、聞いてる?」
高校生の声と、目の前の同級生の声が被って慌て顔を上げた。
コーラを飲んでいる姿は、やっぱりまだ中学生だなぁと思ってしまう。
「俺のお兄ちゃんが好きなの?」
「何で?」
ソーダをいじるのは止めた私は引きつる笑顔で聞き返した。
「倉庫で2人が――キス、してたから」
「まぁ、キスぐらいならまだ許せるけどね」
本当に上手い具合に、後ろの高校生の話と被ってしまってちょっと笑えた。
多分、高校生は私たち子どもの話は聞こえてないと思う。
私にだけ、よりリアルに聞こえてくるだけ。
「そうかもね」
「俺も、好きだったんだけど」
ちょっと怒った口調で、同級生は言い放つと席を立った。
私は追いかけずに、店を出ると家に向かった。