夜空とオモチャ箱。
「何?」
「イヤ、耳の痛い話だなぁ、とね」
ピカピカに磨かれたバイクを、満足そうに撫でながら幼なじみは笑う。
「すぐ飽きて結局は倉庫の中で眠っちゃうよね」
「イヤイヤ、バイクはまじ大切だし! 眠らないし!」
……ちょっとガッカリ。
同級生は、皆ガキに見える中、高校生はとても大人っぽく見えたのになぁ……。
「そんなに色んなものに浮気するけど、結局最後には本命の恋人の元へ戻るらしいよ。お兄ちゃんの本命は何?」
フラフラ、すぐに何にでも夢中になるけど、
他に面白いと思うものが出来ればすぐに捨ててしまうんだから。
「オレは常に本気モードだって! 中学生には難しいかもしれないけど、浮気した自覚はそん時には無いんだよ。そん時は本気なんだから」
「じゃあ、いつ本気じゃないって分かるの?」
お兄ちゃんは苦笑して、ちょっと困って考えている。
そこまで考えて行動してないから、困ってるんだよね。
多分、私とのキスもそう。
したいなー、と思ったからしただけだよね。
「イヤイヤ、10年以上も幼なじみしててずっと好きだったんだけど。お前が中学生になるまで待ってたんだからな」
自信満々とそう言う幼なじみのお兄ちゃんを、
私はとても冷静に見る事ができた。