夜空とオモチャ箱。

お兄ちゃん、でもあり、
幼なじみ、でもあり、

同級生に弟がいるだけあって、年上は憧れの対象だった。


人懐こいし、女の子に紳士だからモテてたし。


「嘘。お兄ちゃんが彼女沢山いたの知ってるよ」

やっと、ランドセルを下ろしてから私を見てくれた事も。



「私を好きだというのも今だけ本気の、『浮気』だと思うよ」

「イヤイヤ、だーかーら」

必死で両手をあたふたさせるお兄ちゃんに、私はため息がついた。


本当に浮気は病気だね。
こんな、自覚なく人を傷つけてしまうこの男は特に。



「あんなに両手広げて待っている彼女が居るから、私に好きだって言えたんだよ。また謝れば彼女さんは許してくれるからね」

「お前……」


「倉庫に貼ってあるプリクラ見たから、今日喫茶店で見かけてびっくりしちゃった」


あっちは私に気づかなかった。
弟にも、ね。

周りに興味もないような、大人っぽい綺麗な人だった。



「私が本命なら、あの彼女さんとも別れられる?」


あんな綺麗で素敵で、
オマケにこんなろくでなしをよく理解している、彼女を。


お兄ちゃんは本当に真っ青になってる。
ちゃんと私を好きだという気持ちも持っているから。


「彼女も好き?」


「……すっげぇ」
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