お隣さん。
「本田さん、えっと、どうしたんですか?」
「あの!」
「は、はいっ」
「すごく美味しかったです!」
「…………え?」
俺の今までにない勢いにびくびくして、涙目になっていた彼女がきょとん、とする。
美味しかったとそう言ったのは、安藤さんのくれた回鍋肉。
キャベツと肉、ピーマン。
それらが甘辛いタレと絡まっていて。
僅かに香るにんにくが食欲をそそったそれを、あっという間に食べてしまった。
人の作った飯を食べたのが久しぶりだからとか、それだけじゃない。
まるで俺の好みを知り尽くしていたかのような。
俺のためかと思いそうなくらいで。
「ふふ、安藤さん、子どもみたい」
「あっ」
いくらなんでも、はしゃぎすぎだろ、俺……!
飯のことでこんな風になるなんて、食い意地が張ってるみたいじゃないか。
カーッと頬が熱を持つ。
思わず口元を手で覆った。
「また作りますね」
「……はい」
幸せそうに笑った彼女に、俺は大人しく頷いた。