お隣さん。








「大学生ってもっとサボれるもんだと思ってた」



大学から駅に向かう道の途中。

そう呟いた同じ大学の友人、智也(ともや)に俺は冷たい目を向けた。



「なんだよ紘!」

「いや、なにをしに来ているんだろうなって思っただけ」

「だって漫画とかではさー、もっとガンガンサボるじゃん⁉︎
ちょっとくらいしてみたかったわけ!」



だってじゃないだろ。



馬鹿だな、と言うとくくれそうな長さの髪をくしゃりとして、拗ねたような表情。

唇を尖らせて、目を細めていて鬱陶しい。



俺より背が高いくせにひょろひょろと細いもやしみたいな奴。

一部では『ともやし』なんて言われているんだとか。



午後が休講になって、思わぬ時間が出来たのに、こいつに付き合ってたら気分が悪い、なんてことになりかねない。



早く駅前に着けばいい。

飯食ってさっさと帰りたい。



「紘は髪型の他はチャラくなくて、それなりに真面目人間だもんなー」

「うるさい」



短くしてくれとしか言わなかったら、思ったよりサイドを刈られたんだよ。

前髪は少し上がっていて、黒髪にしてもやっぱり派手に見えるらしい。



7月と暑い今、この髪型は涼しいからいいんだ。

日に焼けるけど。






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