お隣さん。
*
「大学生ってもっとサボれるもんだと思ってた」
大学から駅に向かう道の途中。
そう呟いた同じ大学の友人、智也(ともや)に俺は冷たい目を向けた。
「なんだよ紘!」
「いや、なにをしに来ているんだろうなって思っただけ」
「だって漫画とかではさー、もっとガンガンサボるじゃん⁉︎
ちょっとくらいしてみたかったわけ!」
だってじゃないだろ。
馬鹿だな、と言うとくくれそうな長さの髪をくしゃりとして、拗ねたような表情。
唇を尖らせて、目を細めていて鬱陶しい。
俺より背が高いくせにひょろひょろと細いもやしみたいな奴。
一部では『ともやし』なんて言われているんだとか。
午後が休講になって、思わぬ時間が出来たのに、こいつに付き合ってたら気分が悪い、なんてことになりかねない。
早く駅前に着けばいい。
飯食ってさっさと帰りたい。
「紘は髪型の他はチャラくなくて、それなりに真面目人間だもんなー」
「うるさい」
短くしてくれとしか言わなかったら、思ったよりサイドを刈られたんだよ。
前髪は少し上がっていて、黒髪にしてもやっぱり派手に見えるらしい。
7月と暑い今、この髪型は涼しいからいいんだ。
日に焼けるけど。