お隣さん。




「本田さん」



智也となんだかんだで会話を続けていると、ポンッ。

肩を叩かれ振り向くと、そこにはふんわり笑う安藤さんの姿があった。



「こんにちは!
こんなところで会うなんて珍しいですね」

「確かに」



いつも通りのやりとりをすると、無駄に感じる視線。



「え、なになに。
紘ー、どちらさん?」

「ああ、隣の301号室に住んでいる安藤さん」

「さんまる、……あー、お前マンションだったっけ」

「そこからか」



会話の流れから、安藤さんが笑いながら挨拶してくれる。



「あ、安藤さん!
この前の茄子と豚バラ丼も美味しかったです!」



夏バテ対策だと彼女が作ってくれたのは、おすそ分けした茄子と豚バラの丼。

角切りにしてごま油で炒めたそれらは醤油とみりんと塩コショウで味つけされていて。

最後に水溶き片栗粉でとろみをつけてあって、白いご飯とよく合っていた。



「あの時の茄子、余った分はお漬物にしたので、また持って行きますね」

「本当ですか!」

「え、漬物⁈ お隣さんすっごいんすね!」

「ちょ、おい馬鹿。
なに言ってるんだよ!」



慌てて智也を小突くと「だってすごくね⁈」と言われる。

いや、すごいのはわかってるから。






< 14 / 25 >

この作品をシェア

pagetop