お隣さん。
*
2ヶ月前、確かに俺はそう、願ったんだ。
神様とか、星とか、そんなんじゃないけど。
特別ななにかに、心から。
それなのに、なぁ、なんでだよ。
……なんで、こんなことになっているんだ。
日付も変わる、夜中に響いたインターホンの音。
常識はずれにもほどがあるその行為は、俺のところじゃなくて、隣の────安藤さんのところから。
「麻央」
その声の主は、俺でも覚えてしまうほど聞いた安藤さんの彼氏。
寝るつもりをしていたけど、ここ最近の定位置────俺と安藤さんの部屋の間の壁。
俺が1番彼女に寄り添うことができるその場所に、そっともたれかかって腰を下ろした。
「一馬……えっと、久しぶりやね」
「うん」
「とりあえず、中に。お茶でも入れ、」
「ごめん」
やけに大きな声。
伝わる、哀しい気持ち。
「もう、その部屋には入れない。
……2度と、ないんだ」
「かず、ま……?」
「別れて欲しい」
時が、止まった気がした。