お隣さん。








2ヶ月前、確かに俺はそう、願ったんだ。

神様とか、星とか、そんなんじゃないけど。

特別ななにかに、心から。



それなのに、なぁ、なんでだよ。

……なんで、こんなことになっているんだ。








日付も変わる、夜中に響いたインターホンの音。

常識はずれにもほどがあるその行為は、俺のところじゃなくて、隣の────安藤さんのところから。



「麻央」



その声の主は、俺でも覚えてしまうほど聞いた安藤さんの彼氏。



寝るつもりをしていたけど、ここ最近の定位置────俺と安藤さんの部屋の間の壁。

俺が1番彼女に寄り添うことができるその場所に、そっともたれかかって腰を下ろした。



「一馬……えっと、久しぶりやね」

「うん」

「とりあえず、中に。お茶でも入れ、」

「ごめん」



やけに大きな声。

伝わる、哀しい気持ち。



「もう、その部屋には入れない。
……2度と、ないんだ」

「かず、ま……?」

「別れて欲しい」










時が、止まった気がした。






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