お隣さん。








俺、本田 紘(ほんだ ひろ)と彼女、安藤 麻央(あんどう まお)の出会いは、特別なことはなく、とにかく平凡で。

だけど少し楽しくて、とても大切なものだった。







高校を卒業して、他県の大学に通うことになったことをきっかけに、俺は一人暮らしを始めることになった。



実家からは結構遠くて、大学にはそれなりに近い1DKの格安マンション。

安いだけあってすごくボロい。

それでも、最低限のものもあり、近くにコンビニなんかの店も揃っているからとそこに決めた。



引越しの日。

新しく俺の部屋になる302号室に着いた俺はダンボールの中から母に持たされた引越し蕎麦を手にした。



左隣の303号室の男は一年のほとんどを海外で写真を撮って回っているらしく、会えたのは奇跡的だとか。

でも、数日後には、またどこかへ行くらしい。



正直、あまりお隣さんって感覚はしない。






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