お隣さん。
──ピンポーン。
「はーい」
インターホンを押すと、パタパタと玄関へと駆けて来る足音。
扉の向こうからひょこっと顔を覗かせたのは、こげ茶色のボブの女だった。
年は……20代半ばといったところか。
髪は耳の下までの長さで、くしゅっと毛先が踊っていて。
大人っぽく、だけど裾はフリルのチュニックは可愛らしく、彼女に似合っている。
二重の大きな瞳にはキラキラと星があるみたい。
穏やかで、癒し系の雰囲気の年上で。
……これはちょっと、俺好みだな。
「隣の302号室に引っ越して来た本田です」
「あ、そうなんですか! どうも、安藤ですー」
「これからお世話になります。
よろしくお願いします」
ぺこ、と頭を下げて持っていた蕎麦を手渡す。
「このマンション、人が少ないので困ったことがあったらいつでも頼って下さいね」
にこにこと笑う姿は人がよさそうでホッと安心した。