お隣さん。
「そういえば方弁……なんですね」
「え、ああ。はい。
元々は田舎に住んでいたんで、気を抜くと出ちゃうんですよ」
「そうですか」
恥ずかしいなぁ、と髪を耳にかける仕草。
あんな声を聞いたせいか。
細い首だとか、短く切りそろえられた小さな爪だとか、柔らかそうな唇だとか。
本当に些細な、女性らしいところが気になってしまう。
そらしたり、他にいってしまいそうな目線を彼女の瞳に合わせる。
「別に恥ずかしいことではないと思います」
俺の祖父母も訛っているけど、あっちは正直聞き慣れた今でさえ、たまになにを言っているのか理解出来ない。
安藤さんとはちゃんと会話も出来る。
それに、普通に可愛らしい。
「ありがとうございます」
にっこり笑った安藤さん。
彼女には人の表情筋をほぐす力でも備わっているのかな。
思わず俺まで同じように笑顔を返している。