お隣さん。




「麻央、おまたせー」

「ちょっとー、ほんまに遅いよー?」



ようやく玄関から出て来たのは色素の薄い天パの男。

いやーごめんごめん、って緩いな。



「よっし、行こうぜ」

「はいはい。
あ、本田さん。
たまにはいいですけど、あんまりコンビニのお弁当ばかり食べちゃだめですよー」



それじゃあ、とぺこり。

俺も頭を下げた。



「さすが栄養士さんは言うことが違うなー」

「もう、そんなん言うてんと行くよ」

「あ、そういえば今日の晩飯なに?」

「オムライスを作りまーす。
グリンピースもちゃんと入れたげるからね」

「うぇー、おれグリンピース嫌い」

「うちの妹らみたいなこと言わんの」



……頭の弱そうな男。

あんまり言うのも問題だけど、彼女はそんなに趣味がいいわけではなさそう。



安藤さんは妹がいる。

安藤さんは訛りがある。

安藤さんは栄養士。

安藤さんは……彼氏持ち。



一気に増えた情報に混乱する思考を断ち切るように、俺は珍しく大きな音を立てて扉を閉めた。






< 9 / 25 >

この作品をシェア

pagetop