私の中で男になって
「産むことを美徳としてとらえてちゃいけないよ
生命の倫理に従おうとこの社会では通用しないよ」



「あいかわらずなんかすごいねぇ」

翔君はこんなこと言う私をいつも感心そうに眺める

翔君はこういうことを難しく考えたりしないのかな?

それとも私の前で言わないだけかもしれないけど


「じゃあ、もしできたらどうするの?」


翔君はこういう“もし”の話が好きだ。








「堕ろすんじゃない?」

言いたくはなかったけど、嘘を言うのはもっと嫌だっ



非常な女だと思われたかもしれないし

母性のかけらもない発言だとは思うけど







この社会の中に情や母性だけではどうにもならないことがたくさんある



そのとき「ふーん、まぁそうだろうね」と言った時の

翔君の賛否どちらでもない顔は





薄暗さでよく見えなかった

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