私の中で男になって
日もすっかり暮れて朝から歩きまわった私たちはくたくただった


「ねぇ、あれのって休もうよ」

「うん」


パレードも終わりみんながぞろぞろと帰りの支度を始める

私たちは疲れたから帰ればいいものを

少しでも長くいたいのか

薄暗いボートに乗るアトラクションに乗っていた


5分待ちと書いてあっても実際にはまったりしないで

入口から搭乗口の間を歩行するだけだった

人はガラガラ

私たちの前後には3,4組のカップルしかいない

普段なら15人ほどのるボートに

私たち2人だけで乗った


暗い闇の中私たちはぐったりしていて今にも眠りそう
だった

握り合った手を確かめるようにもう一度握って

もっと翔君の近くに寄る

「ん?」

そう言って翔君は少し笑って腰にそっと手を回す



暗くて周りには人影が見えない

左腰にある翔君の手が私をドキドキさせる



初めてのデートでもないのに

初めてのキスでもないのに

こんなにドキドキする

もっと翔君に触れたい

もっと翔君と近くになりたい




思ってるだけじゃ我慢できなくなる


キスされたあとみたいに体が熱くなる

どうしようもなくなっちゃって、翔君の顔をじっと見
つめる

「なに?」

「ううん。」

「なぁんだよ。」

翔君は私にかけた手をもう一度かけなおす



翔君はどう思ってるんだろう

いつもの公園のときみたいなキスをしてほしい


キスされたら、もっとほしくなっちゃうってわかってるけど


こんなにも体が熱くなってるのは私だけなのかな






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